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2016年5月11日
量子力学を使ったコンピュータとして知られる「量子コンピュータ」ですが、その仕組みやできることを説明できる人は少ないのではないでしょうか。一般的なコンピュータに比べて遥かにパワフルな処理能力を持っており、実用化に向けて少しずつ研究が進められています。
今回は、量子コンピュータの仕組みやできることといった基礎知識を分かりやすく解説していきます。
目次
量子コンピュータとは、高速計算機として次世代への活用が期待されている、現在研究中の計算機のことです。「量子」とは量子力学のことで、量子コンピュータとは「量子力学ならではの物理状態を用いて、高速計算をするコンピュータ」と解釈すると良いでしょう。
量子力学ならではの物理状態とは、「重ね合わせ状態」や「量子もつれ状態」などのことで、これまでのコンピュータにはない概念です。これらを用いることで、従来の計算スピードを遥かに超える高速の、量子計算と呼ばれる計算ができるのです。
現在、量子コンピュータの研究・開発はGoogleとIBMがリードしています。日本では、理化学研究所・NTT・NEC・東芝が共同開発に乗り出していますが、世界に比べて遅れをとっているという意見もあります。
遅れている原因の1つが、開発に関わる資金不足です。日本が開発予算として設定した1,000億円は、世界的に見てもあまり規模が大きいとは言えない額であり、実用化にはあと20~30年ほど掛かるのでは?という試算も出ています。一方で、莫大な資金を投じている中国では、今後3~5年で実用化できる見通しも立っています。
量子コンピュータの仕組みやできることを説明する前に、今までのコンピュータについてもおさえておく必要があります。今までのコンピュータは、第二次世界大戦中に考案された「チューリングマシン」という原理が基礎として作られています。歴史があることから、「古典コンピュータ」と呼ばれています。
コンピュータの中にある集積回路は、半導体の集まりから作られています。半導体がオンオフをすることをビットと呼びます。半導体の数が増えるほどビットの数が増えますが、それによって計算の能力はどんどん速くなります。
古典コンピュータは半導体の数を増やしながら処理能力を向上させてきましたが、実現できるスピードには物理的な限界があります。この限界を超える方法として、量子コンピュータが注目されるようになりました。
量子コンピュータでは、量子力学ならではの「重ね合わせ状態」によって、計算のスピードをアップさせています。そもそも量子とは、原子を構成する陽子・中性子、原子の周りをぐるぐる回っている電子の総称です。電子が常にぐるぐる回っている状態は、電子の表と裏が同時に見えている状態となりますが、この状態のことを「重ね合わせ状態」と言うのです。
量子コンピュータでは、「重ね合わせ状態」を活かすことで、表と裏の情報を一度に処理できるイメージです。一方、古典コンピュータでは、表と裏の情報を1つ1つ処理していくため、計算速度も遅くなってしまうというわけです。
量子コンピュータは高速計算以外にも、さまざまな分野への活用・応用が期待されます。
現在、顔認証や指紋認証、自動運転などの分野で機械学習の技術が使われています。ここに量子コンピュータを取り入れることで、より精度の高い画像認識が可能になります。
膨大な情報データの中から、計算を通じて最適なものだけを抽出することを組み合わせ最適化と言います。これを行うために、量子コンピュータの技術が活用できると期待されているのです。
組み合わせ最適化を行うことで、業務がさらに効率的に行われるようになります。例えば、物流などの配送ルートの検索や、新薬を開発する際の分子構造の決定など、幅広い分野への活用が期待できます。
量子コンピュータを使えば、惑星間の重力などの複雑な計算もスピーディーに行えるのです。現在スーパーコンピュータを使って時間がかかっている計算も短時間に済ませることができるので、宇宙に関するあらゆる謎が解明される日がぐんと近くなるかもしれません。
量子コンピュータはまだまだ研究段階であり、実用化されるには時間がかかるでしょう。しかし、そのできることは無限大で、私たちの生活を豊かにするだけでなく、宇宙や人類に関する謎の解明にもつながる夢のある技術で、今後に期待が高まります。
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